加速度、速度、変位の備忘録
変位を微分すると速度が、速度を微分すると加速度が算出されることは高校の物理の授業で習うでしょう。
では、逆に、加速度データから変位を求めることは可能でしょうか。
加速度データがきれいな正弦波であれば、加速度を積分してその初期条件である初期速度がわかれば積分定数Cが求まり、速度の式が求まり、その要領で変位も求めることができそうだとは考えられます。
実際に加速度データをもとに考えてみます。
今回はエルセントロ地震の加速度データをビルレタより拝借しました。その加速度時刻歴を示します。
この加速度データを積分します。台形積分の累積値により求めたデータは下記のようになります。
速度の時刻歴からわかるように、速度の波形は基線からやや上にずれていることがわかります。地震が終われば、この地震で言うところの加振開始から50秒程度のところでは、加速度がほとんど働いていないため、速度が常に正の値をとるようなデータは、感覚とは異なり変な印象を受けます。
まず結果をもとに考えてみると、加速度の正成分が多ければ、結果は正方向にずれていくということある程度納得がいきます。この計算は台形積分により行っていますが、正の部分の台形が多かった結果、基線が正のほうにずれていると考えられます。
加速度の正成分が多ければ、速度も正の方向に増えていくと考えるのは妥当ですが、最終的な速度の値が0に近い値となっているのが腑に落ちないという結果から、実際には本当にこのような値になっていることも考えられますが、
「ただ加速度データを積分しただけでは、正しい速度データになるとは限らない」
ということが言えるのではと思います。このことは、
「加速度を積分したら、速度が出てくる」
というなんとなく知識を持っているだけでは考えられないことのため、初めて遭遇したときにびっくりすると思います。自分も、それほど学が深くないので、まだ、
「加速度データには情報が少ないので、誤差を含む積分値が正しいはずがない」
程度にしか考えられてませんが、そのくらいの理解で事足りていると思っています。
どうしても、基線ずれを解決したいときもあると思います。そのようなときは基線ずれを生じさせている長周期成分を除くデータフィルタをかける、基線ずれを招いている曲線を最小二乗法より決定し、データから差し引くことで基線を合わせるといった方法があります。
データフィルタや最小二乗法といった言葉は、次回以降説明していければと思います。
はじめまして研究
はじめまして、研究職を志す理系大学院生です。
理系大学の研究室では様々な解析上の数値処理や、そのための知識が必要ですが、ちょっとしたものやことをインターネット上で調べようと思ってもなかなかそれを書いている人がいない。ということは需要があるのではないかと考えたので、自身の数値処理上の知識やプログラムコード(現段階ではMATLAB)などを備忘録的に書き連ねて行けたらと思っています。
ちなみに私は振動学系が専門なので、だいたいそのような内容だと思ってください。
顔も知らないどこかの理系研究室の方のちょっとした疑問解決のお役に立てれば嬉しい限りです。
今後の更新にどうぞご期待くださいませ。